2022年04月28日
ヤドカリへ借り
確かあの時、ご結婚なさってから、子授かりを願い、ご夫婦で努力を続けるも中々立ち行かず、労も精も使い果たし、苦悩を抱えて大神さまの元を頼って来られたのでした。
それが、今回、可愛い男の子の赤ちゃんを連れて、来談してくださったのです。
「あの時の秘儀で授かったんです!」
声を弾ませて、ママになった彼女が言われます。
「秘儀‥?」
少し間を置いて、
「あっ。あれ?やっぱり、あの時の方ですよね?!」
「はい、ヤドカリの!」
お互いほぼ同時に、それぞれのセリフを口にしていました。
思い出しました。
「あのなぁ、近くの海に出向くのじゃ。そこにヤドカリがおる。虫かごのようなケースでよいから、それを持って行き、海水を砂ごと入れ、そこに見つけたヤドカリも入れて、自宅に連れて帰りなされ。そして、三晩置いたら、四日目の朝、元の海に戻すのじゃ。」
確かそう言われました!
その時は、不安やまた半信半疑にも思えたのでしょう。
(実は私もでしたが。笑)
「ヤドカリですか?海はあるけど、いたかなぁ‥。」
「まぁ、大神さまがそう言われるのですから、行ってみましょう。秘儀なんですよ。きっと!」
御神託を私の言葉で締めくくり、少しお時間を頂戴しました。
というのも、彼女の生業(なりわひ)は、『助産師』。
私が尊敬する生業のひとつに勤しみ励む方を目の前に、黙っていられるはずがない(笑)
私自身、六人の子どもを出産し、どのお産も夫より親より、いちばん心の支えとなってくださったのは、それぞれの助産師さん達でした。
その時の感謝の念と、予てよりの畏敬の念は、生涯消えることはないでしょう。
お聞きしたいことは山ほどありましたが、その中で何故か、堕胎の話を振ったのです。
「週数の大きい子は、産声みたいに泣いたりするんですよね。でも、それをどうすることも出来ない(しちゃいけない)から、そのまま放置しておくんですよね。息の根を止める訳にはいかないですもんね。辛いですね。助産師さんの仕事は、実は命を生み出すお手伝いだけじゃないんですよね。」
私は目の前の彼女を、助産師さんの代表として、精一杯労いました。
「はい、その通りです。静かになるまで、ただ、見ているしかないんです‥。」
と、お話を返されました。
すると、今度は突然彼女の方から、次のようなことを言われました。
「実は、もう前の事なんですが、その時に(堕胎の手術の時に)取り出した赤ちゃんで、とってもかわいい男の子がいたのです。結構、週数が経っていたので、性別もお顔もハッキリ分かりました。その子があまりにも可愛いものだから、写真に収めずには居られなかったのです。そしてその写真を、私は今も大事に持っています。」
私は、この話を聞いて、すぐに「ハッ!」としました。
「あのですね、先ず申し上げます。ご神託だけじゃなくて、私が雑談のようにしながらこうやってお話をする中にも、実はヒントや御神託めいた内容がたくさんあるのです。今回の不妊のご相談に関して、ヤドカリの御神託ももちろん大切ですが、今のお話を伺って、もうひとつせねばならないことがあるようですね。今おっしゃられた、その赤ちゃんの写真、それですよ!それを持っていてはなりません。本来あなたのところに降りてくるべき赤ちゃんのたましいが、あなたがそれを大事に持っていることによって、自分が降りて行ってもいいものか迷っています。わかりやすく言うと、他人の赤ちゃんを大事にしているから、本当のあなたのお子さまが寂しがったり、嫉妬したりして、降りて来てくれないのです。」
(このような時、私は、同時進行で御神託を受け取りながら、自分の言葉でお話し差し上げています。)
少しの沈黙の中で、彼女はその意味を咀嚼していたようでした。そして、
「じゃぁ、この写真はどうしたらいいでしょうか?」
と言われました。
「そうですね。“今までありがとう。とってもかわいかったよ。これからは、行くべきところに上がって頂戴ね”と伝えて、その後燃やしてください。その灰は、川に流してください。龍神さまに非礼のないようにね。」
彼女によると、写真のお焚き上げ、ヤドカリの秘儀をしてから直ぐに、懐妊したようでした。
奇しくも同じ男の子を。
そういえば、以前は‥。
おっと、長くなるので続きは次回、お便りしますね。