2026年02月12日

こじつけではなくて

「あっ、今日はお母さんがご一緒においでですね。」

 

桜子さん(仮名)が38歳の後厄の厄祓いにお運びでした。

 

私は祓串で撤下神饌(てっかしんせん🟰神さまの神気が籠った御神酒やお米など)や納めていただいた御初穂料、そして玉串を浄め後方に向きを変えると、この神殿内と桜子さんを浄めました。

 

そして祝詞の奏上を始めました。

 

するとお母さんは、ご自宅に場所を移した姿を視せてくださいました。

 

そう、桜子さんのお母さんには肉体がございません。

 

数年前、ある日突然病気にて他界されたのです。

 

後方からは桜子さんのすすり泣く声が聞こえていました。

 

『きっと視えないながらもお母さんを感じていらっしゃるんだなぁ。』

 

祝詞奏上を終えて私は美和さんに語りかけました。

 

「桜子さん、お母さんは今、ご自宅の台所に立っていますよ。もやしやにんじん、冷蔵庫に残っている野菜を豚肉と炒めてその上に溶き卵を回しかけて‥。あー、でも火が強くて卵がポロポロになってしまいましたねー。あっ、台所に立ったままさつま揚げをつまみ食いしていますよ。」

 

「あっ、今度はつっかけを履いて庭に出て洗濯物を干しています。“つっかけ”って分かります?昔のサンダルみたいなものですよ。お母さんの足のサイズより小さいもんだからお母さんのかかとが出てしまっていますねぇ。霊は足がないわけじゃないんです。あっ、それが終わったようで、今、家に上がり畳を上げて掃除を始めました。桜子さんに“ひとりで家事を任せてごめんね”って言っていますよ‥」

 

私の“実況中継”を聞きながら、桜子さんの目からは涙が溢れていました。

 

「家には父と妹が一緒に住んでいますが、私がひとりで家事などしています‥」

 

「そうですか‥。だからお母さんが手伝ってくれていたんですね。そうだ、お母さんセーター着ていたんですが、色はバーガンディーのようでしたよ。」

 

「母は、小豆色のようなそんな色が好きでよく着ていました。」

 

そのとき不意に私の脳内にはお母さんのお仏壇が映りました。

 

そして同時にお餅が。

 

仏壇とお餅の視え方(この時は霊視している空間の中に区切られた別な空間がありまして‥言葉で表現するのがとても難しいのですが、単に仏壇にお餅が供えてある映像などではありません。)から、お母さんがお餅を欲しがっていることと先月のお正月にお餅をお供えしていないことが分かりました。

 

「お母さんにお正月お餅をお供えしましたか?食べたがっていますよ。」

 

「あっ、いえ。今年のお正月は、家族みんな鹿児島にいなかったんです。だからお供えしていません。」

 

桜子さんがバツが悪そうに言いました。

 

そしてそれに続けて、

 

「お餅といえば‥。私はあんまりお餅が好きではないんですが、先日立ち寄ったお店でなぜか買って食べたんです。」

 

「あぁ、やっぱり‥。それはですね、お母さんが食べたがってるんです。近いうちにお餅をあげてください。あっ、からいも餅でもいいんですって。お母さんが今、そう言っています。」

 

「母はからいも餅も好きでした‥。」

 

そのときまた私には、ある場所が視えていました。

 

「〇〇の道の駅で買われたらどうでしょう?お母さん、そこに行きたがっていますよ。お蕎麦も美味しいですもんね。今、新そばの時期ですし。確か、からいも餅も地元のお菓子屋さんの有名なものがあります。」

 

急に桜子さんが驚いた顔をしました。

 

「え‥。そこ、2日前に父とGoogle ですごく見てました!」

 

桜子さんが続けます。

 

「その日、仕事の関係で移動しなければならなかったのですが、雪が降った次の日だったこともあり、いつも通るルートの峠が通行止めになっていまして、偶然にもその道の駅がある道路を通って行きました。帰宅後、父が“峠を通らずにどのルートで行ったのか“と聞くものですから、Google Mapsを見せて、その道の駅の記事も二人でじっくり見たんです。」

 

「それもお母さんのリクエストですよ。そこにお父さんと桜子さんと、あっ、もちろん弟さんや妹さんも一緒でいいんですけど、みんなで行きたいんですよ。」

 

「すごい‥」

 

桜子さんは感激しながら涙が止まりません。

 

私は言いました。

 

「ね、こうやって亡くなった方は、私を通じて家族に思いを伝えてくださるんです。私が言っていることは、決してこじつけなんかじゃないって分かってくださるでしょう?言うなれば、私は解析しながら点と点を繋げているだけなんです。」

 

「はい。本当に‥。厄祓いに来て母のことも聞けてありがたく、嬉しかったです。」

 

「そうですね、よかった。ここまでスムーズにお母さんの思いが伝えられるのは、お母さん自身が生前ここへおいでくださっていたということもありますよ。他の方にも言えることですが、やはり私が覚えているくらい直接その方とお話をしたり、お顔合わせていたら当然私の思い入れも違いますし、またお亡くなりになられた霊の方も私に面識や信頼があるから想いを伝えやすいんだと考えます。じゃあ‥お父さんにもよろしくお伝えくださいね。」

 

「はい。ありがとうございました。」

 

桜子さんは玄関の外に出られても深々と頭を下げてからお帰りになられました。

 

私にはその後方でお母さんこそが深々とお辞儀されるお姿とそのお声が届いていました。

 

『先生、今後とも娘をよろしくお願いします。』