2020年12月18日

武勇伝 其の二

科目によって、人が大幅に入れ代わる状が良く観察できる体育館会場の右側の一番後ろが私の陣地でした。やはり、にこいちの科目と、社会福祉は急に受験者が増えました。ほとんどが若い方で“保育教諭”を目指す方かな?とお見受けしました。(子ども子育て支援法の施行に伴い、認定こども園に移行した幼稚園の教諭は『幼稚園教諭免許と保育士資格を併せ持つ保育教諭』になることを求められています。)また、還暦前後の方も数名おられましたが、
容易くはない試験に挑まれる姿に感服しました。

 

そんな中初めての保育士試験で、「試験官は、立ちっぱなしで大変だな。」と気遣う余裕が私にあったのも、万全の態勢で臨んだからでしょう。時間配分にも気を遣って学習してきた為、試験時間も私には長いくらいでした。一応、見直しもして、絶対正解だと自信が持てる問題の数が余裕で6割を超えていたので、安心して全ての科目、残り時間を20分程残して退席し、次に備えました。うかうかして試験時間いっぱいまで着席していたら一斉に解答用紙を回収するまで、退席出来なくなります。そうなると、合間で20分ある貴重な山を掛ける時間(笑)も、トイレに行く時間も10分程しか無くなりますからね。保育士試験は、殆どが女性ですから、毎回休み時間ごとにトイレ前は大混雑でした。焦りからか横入りする人もいて、『おいおい、人としてダメだろ。こんな人が乳幼児の保育に携わるの?』と残念な気持ちになりました。

 

それにしても、国試は相変わらずと言いますか、時に見たこともない問題や意表を突く問題が出ますよね。どの国試でも捨て問題は必ずあるものですが。

 

二日間ともそんな感じで無事に受験を終えました。

 

その後、自己採点をするに当たり勇気が足らない私の横で、半分不謹慎に面白がりながら娘が正解を読み上げ、二人で結果を確認しました。

 

平均9割の出来栄えでした。

 

子どもたちが「頑張ったね!」と声掛けしてくれましたが、頑張ってくれたのは子どもたちのほうこそです。受験勉強期間のみならず、試験の二日目は日曜日で保育所が休園でしたから、兄弟姉妹だけで過ごして待っていてくれたのです。本当にありがとう。

 

偉ぶるようですが、当然の結果といえるくらい勉強していましたので、9割合格に舞い上がることなく小さく「よし!」と心で喜んで、冷静に二次試験の練習に取り掛かろうと思いました。保育士試験は、一次が学科試験、二次が実技試験とあります。そしてこれがまた、音楽、造形、言語の中から二つを選び“にこいち”でどちらも6割以上で合格というシステムです。(にこいち好きですね、保育士試験。)

 

ピアノが出来ない私は、必然的に音楽は選択肢から外すことになるのですが、困ったことに造形(絵画)も苦手。棒人間しか書けません(笑) 経験者によると背景も描いて色まで塗るので制限時間内では足りないぐらいらしいのです。

 

「それでもやるしかない!」そう思っていた時、私には有難いお繰り合わせが!なんと、コロナの影響で厚労省より音楽の試験中止が通達され、“今回に限り造形または言語のいずれか一つが6割以上で合格とする”という特例になったのです!! 有難い理由が、少々複雑ですが、「よし!いける!!」と先が見えました。

 

先が見えたところで、「こども環境管理士」の勉強の最終調整に入りました。
ふふふ・・・。
実は、保育士の一次試験から二次試験までの間に、この認定試験をひとつ受験しようと願書を提出していたのです。

 

環境省認定の試験です。最近、『SDGs』とよく耳にしますが、それを含めた学習内容です。今、生態系サービスが破壊されています。あちこちで起こる天災や異常気象はそのせいです。私たちは次世代の人間へ“世代間公平”という理念の元、バトンを渡さねばなりません。そのためにこれからを担う子どもたちへ、自然との共存共栄を正しく伝えなければならない時が来ています。『こども環境管理士」はその指導をし、またそれを正しく引き継いでいく人間を育てることを主たる目的においた資格です。

 

この試験勉強がまた興味深いものでした。生態系を知るに当たり、動植物の名前と生態、外来種や在来種もたくさん覚えました。虫は小学生の息子が詳しいので一緒に楽しく盛り上がり(私は時々、蜘蛛や爬虫類の写真に引きながら)、「ソメイヨシノとレンゲは外来種なんだね!知らなかったね!!」と上の子たちにも雑学のお福分けをしながら勉強を進行させました。また、試験には小論文もあり、それがたったの400字なので、おしゃべりな私の論じたいことの方が『起承転結』に余りあり、収めるために『序破急』の形で練習をしていきました。

 

そして、福岡は天神で11月15日日帰り受験をしたのですが、その時に武勇伝が生まれました(笑)

 

その日は日曜日、またもや保育所は休園で上の子たちにモンスターのお世話をお願いしなければなりませんでした。試験は14時から16時の二時間ですから、『鹿児島を12時くらいに新幹線で出発したら受験を終えて18時には帰宅出来るはず。離れるから少し心配だけど、その間の半分は午睡だし、大丈夫だな。』と算段していると、「いいな~。新幹線乗りたい。」とまさかの娘の言葉。しかし、試験中どうしてもお世話にならないといけない身の私はそれを一蹴出来ず、予定外の交通費が発生することを惜しみながらもOKしました。この辺がまだ15歳で、かわいいところなのです(笑)

 

となると当然、道中勉強なんて出来ません。
旅行気分の娘と、まだ動物寄りの娘の引率で精一杯でした。
それでも、(保育士試験直前もそうだったのですが)時間短縮のために自分なりにまとめたノートを見ようとしました。しかし、やっぱり最後はテキストでちゃんとした言葉や表現、問題の出され方を確認しておこうと思って大正解でした。というのも、自分で要約したものは途中から書くことが面倒になるせいでそれが甘くなり、大雑把になり、試験においてその自分の適当なまとめ方のせいで、知識があるのにも関わらず、答えに繋がらない恐れがあると思ったからです。

 

移動途中で寝てしまった(午睡の時間ですもの。)娘を抱えて、汗だくで地下鉄に乗り、とにかく試験会場を確認してから、私の試験中にこの子たちが過ごせる場所探しをしました。もう、腕はプルプルです。我が子だから抱いて歩き回れますが、これが同じ10キロでも米袋なら無理でしょう(笑)

 

近くにようやく公園を発見し、幸いなことに日和にも恵まれていましたから救われました。

 

「そこで待っててね。2時間の試験だけど、1時間経ったら退席可能だからそれで終わらせて直ぐ出て来るから。」と言い残し、試験会場に後戻りました。

 

そこからの私は、神懸かっていましたね(笑) 35問の択一問題をテンポよく済ませ、小論文に入りました。もう、あの子たちが待っていると思ったら気が気じゃありません。いつもにも増して筆が進み、なんと最後のひとマスでちょうどまる(。)にて書き終わりました!もう、人間技ではありません。退席可能時間まで見直しをし、まだ試験中の皆の視線を感じながらそろりそろりと出口へ。あまりにも早かったので、試験問題を回収されてしまいました。そこからは猛ダッシュで公園へ行き、無事合流しました。娘が私を安心させるために、妹の写メをたくさん撮ってくれており、エピソード付きで見せてくれました。それからまた新幹線で遠路帰宅すると、洗濯物の取り込みやお風呂の用意を息子がしてくれていました。ありがとう。

 

私は常々、
「家事はみんなでするもの。
お母さんひとりの為に洗濯機を回しているんじゃないからね。
お母さんしか出来ないことはお母さんがするけど、あなたたちでも出来ることはあなたたちもしてね。」
と言っています。

 

こんな風に協力的な真名子たちの話を聞いて、反抗期はなかったのか聞かれたことがあります。勿論、ありましたし、あります(笑)
ただ、普段からのコミュニケーションのおかげで、そんなに大きく出ていないのだと思います。

 

そして私は基本子どもたちへ、友達や仲間のように関わっていますが
「本当の友達ではないから、怒るときは怒るからね。」
と伝えています。子どもたちがそれを理解してくれているおかげで平安なチームでいられます。

 

反対に私の虫の居所が悪い時もあります。そんな時は
「お母さん、機嫌が悪いから怒られないようにしてね。怒る時に普段よりも怒りすぎるかもしれないから、その時はごめんね。先に謝っとくね。」
と先手を打っておきます。
さすれば、小言を言われる前に子どもたちは自主的に動いていますし、私から怒られすぎても過分に気にしないでいてくれます。

 

しかし!!
言葉もまだしっかり理解できない、暗闇も鬼もお化けも分からないから怖がらない、1歳の娘には敵いません(笑)

 

「おいでー!」と言っても、挑発される(笑) 写真の通りです。
これから本格的な魔の二歳児に…。
戦いは続く(笑)