2020年12月30日

しめ縄

しめ縄は、『注連縄』と書くのが普遍的ですが、高千穂では『七五三縄』とも表記します。そして下がった房の数で、“天神7代、地神5代、日向3代”の神さまを表しています。(日向高千穂神道の待合室に鎮座される高千穂の神々を祀る神棚には、その七五三縄を掛けてございます。)
因みに、高千穂は一般の家庭でも一年中しめ縄を飾る風習があります。

 

さて、日向高千穂神道の神殿も新年を迎えるにあたり、しめ縄を替える日がやって来ました。大抵28日にそうするのですが、今年はその前日27日に決行しました。その日が大安だったことと、頼りになる息子が一日在宅しているということもありました。

 

「おにいーちゃぁーーーん!ねぇーねーーー!」

 

前から“そのうちしめ縄替えるから手伝ってね宣言”をしてはいましたが、急に発せられたいつもとは違う母の不吉な呼び声にそれを悟った高校生たちが、初め聞こえないふりをしていたのを何となく分かっていました(笑)

 

先ずは、神棚全体に掛かる大きなしめ縄を外します。次に、お宮のしめ縄をそれぞれ替えるのですが、神の位を重んじて正面の三社宮、そして右の一社宮(左より、右の方が高貴な場所)、最後に左の一社宮の順にしていきます。
毎日のお水替えもこの順です。

 

ついでに申し上げますと、複数箇所、神社参詣をする時もこうして神の位に添って順にお参りをしています。だから、あっちに行ってこっちに戻って来て、またあっちやそっちに行くってこともあるのですが。

 

流石に相手は高級霊たちですから、それを守らなかったからと言って障りを起こすようなことはしません。ただ、機嫌は良くはありませんが(笑)
でも、だからという訳ではなく、私はそれくらいしても・・いや、そうしてまでも神を敬う気持ちを持っている為、それを苦とは思いません。しかし、ガソリン代は勿体無い(笑)

 

そうそう!ものはついでと言いますから、これも氏子の皆さんは念頭に置いて頂きたいことなのですが、基本、神社参詣と墓参りは同じ日にはしない方が望ましいです。
仮にそうせざるを得ない予定になってしまう場合は、先に神社参詣を済ませましょう。勿論、数箇所参拝される場合は、神の位を重んじて。それから、墓参りについてですがお嫁さんに行かれた女性は、嫁ぎ先をお参りしてから実家の墓の方に行きましょう。(基本、嫁ぎ先と実家は3対1のバランスで手を合わせるものです。)

 

ところで、しめ縄替えって、繊細な作業であり、尚且つ重労働だと私は思っています。
実のところ、あまりしたくはありません。神さま、ごめんなさい。

 

新しい縄とこれまでの縄を並べて大体同じ位置に紙垂を入れ込みます。
この作業が繊細で大変!
一人ではなかなかうまく出来ません。小さくても固くよじってあるので、紙垂の位置や入れ方が上手くいかずに何度も繰り返すと、人差し指の表面が擦過してヒリヒリしてきます。
神殿には、結界を張ってあるのですが、そのふたこ縄の紙垂を入れる時なんて、もう指が赤く腫れてしまいます。

 

そうしてまで位置を決めて、いざ掛けてみると…。
その時、しめ縄が微妙によじれることも多々あるので、紙垂が真下に下がらないこともしばしば…。

 

そんな時は、しめ縄を掛けた状態で紙垂を挟んでいかねばなりません。
そうなると、ひとりでは困難です。

 

しかし!今はもう子どもたちが大きくなってくれています!!
あの頃、どこに行くにも引いていたあの小さな手が、今は私を救う手に、助ける手に成長してくれているのです。感動!!
そんな思いを巡らしながら、いよいよ大しめ縄をよじり、紙垂を入れる作業に。

 

「いくよ、せーの!」
よじる作業を娘にさせる訳いかないと、私がしたのですが何度しても上手くいかず、
「何やってんの⁈」
と娘に笑われ、私は掛け声の威勢だけいい自分がおかしくなり、笑い出すと益々手に力が入らずにいました(笑)すると、このままだと日が暮れると案じたのか、とうとう娘に若干キレ気味に代われと言われてしまいました。

 

「無理だって!お母さん、何年やってもなかなかスッと出来ないんだよ。」
と言ってる側から
「私、自分の道見つけたかもしれない。」
と、一回で上手くこなす娘!!いやはや…。
それにしても、『自分の道』って言い方(笑)

 

この娘、さっきまで、私と息子がせっせと作業していた時、こちらを眺め、後ろで“飲むヨーグルト”をストローで吸いながら、
「私は、何すればいいのぉ~。」と。
その言葉は私の耳に届いてはいたのですが、黙々と作業していると答えるのが少し面倒で黙っていましたら、
「私、祈っとこー。」
と。簡単に言うな(笑)

 

作業が順調に進み行く中で、娘から
「ねぇ、神さま今日お水替えた?」と。
「あっ!しまった!!後回しにしてたら、忘れてる!!」
というと、
「神さま、おこだよ。」
だから、安っぽく言うな(笑)

 

大神さまも、今どきのJKには白旗を上げましょうよ(笑)

 

リビングにいる戦力外の小学生の息子から
「ママー、さけるチーズ食べてていい?」
声が聞こえます。
“まーた、ご飯前にそんなの食べてご飯を食べないつもりだな!”と思った私は
「さかないで食べるんなら、食べていいよー。」
と言ってやりました(笑)

 

私と娘の漫才のようなやりとりを聞きながら、息子は寡黙に仕事を進めています。
そんな息子の姿を見て、私は一方的に話しかけました。

 

「お兄ちゃん、1,2歳でトイレトレーニングしてる頃、便器に座らせて『“しー”してごらん。』って言ったらさ、指を口に当てて『“しー”』って。『いや、静かにじゃないし、内緒じゃないし』ってお母さん、突っ込んだもんね~。」

 

「お兄ちゃんさ、3歳くらいだったかなぁ。アンパンマンが好きで、『アンパンマン、助けてー!』ってセリフをよく言ってたんだけど、たまにさ、お出かけしてる時、車の後ろ座席から外に向かって『助けてー!』っていう訳よ。お母さん、周りから変な目で見られてたし。」

 

「でさ、お兄ちゃんがねー、4,5歳の頃だったかなぁ。神棚の前に座って、ごにょごにょ言ってたのよ。まさか、もう祝詞を覚えてしまったの!?!?ってびっくりして、聞いてたらさ、『どんぐりころころ、どんぐりころころ…』って言ってたからね。笑ったよ~!」

 

「あとさ、年長さんの頃、高千穂の天安河原を参拝して帰りに、雨が降り出したら『先に行っとくね。』ってお兄ちゃんが走り出してさ、でもその先の曲がり角から既に姿がなくて、流石に子どもの足でそこまで早いはずがないって、もしかしたら横から崖を滑落したかもって、青くなって探してね、でもいない。見つからず、駐車場の売店でこんな子見かけなかったか尋ねたら、『そのお坊ちゃんなら、奥でお茶を召し上がってますよ。』と!見れば、にっこりと試食をあれこれ御馳走になっている。『え?え?早くない!?直ぐに追いかけたから、大人の足で追いつくはずなんだよ?しかもなんで全く濡れていないの!?』ってお兄ちゃんに聞いたらさ、『だってね、走ってたら金キラの神さまと真っ黒の神さまが来て、僕をびゅーって。そしたら足がマリオのBダッシュみたいに早くなったんだもん。』って答えたのよ。その時は、『不思議だね~!でも、全く雨に濡れていなかったしね。その神さまたち、何だったのかね。』って言って終わったんだけど、その後2,3年してから謎が解けたよね。今はもうお宮だけに統一したけど、この前までここに立たれてた聖観世音菩薩と大日大王不動明王だったよね。お母さんは、仏像を発注した時、身丈はお願いしたけど、色のことまで細かくお願いしていなかった。だから、その二体を納めてもらった時、驚いたもん!あの時、高千穂でお兄ちゃんの前に現れたという二体と同じだ!!って。」

 

「それから、一年生の時、音楽の授業中にいきなり教室飛び出していなくなって、先生たちが総動員で探したら、雨が降る中ウサギ小屋の前でずぶ濡れで立っていたって、担任から連絡がきたことがあったよね。担任は『何か悩んでいますか?』って聞いて来たけどさ、お兄ちゃんはお母さんが聞いたら『こっち、こっち。』って声がしたから行ったんだって教えてくれたもんね。」

 

「そういえば、祝詞のどんぐりの話で思い出したんだけど、お兄ちゃんが二年生の頃だったかなぁ。お母さんが怒ったのよね、何のことでだったかは忘れたんだけど。何故か、ずっと反抗するもんだから、『自分が悪くないって思うんだったら出て行きなさい。』って言ったらさ、ホントに出て行ってさぁ。お母さん時間を計りながら、玄関のところで待っててねぇ。そしたら、擦りガラスに透けてそこに帰って来たのが見えたのよ。もう薄暗くなっていたから安心して、涙を拭いて、しれっと『あら、お帰り』ってドアを開けたのね。見たら、お兄ちゃん手やポケットにいっぱいどんぐりを持ち帰って来てた。『何?このどんぐり、どうしたの?』って聞いたら、『さっき、ママとケンカした時、下の公園で拾って来た。』って言うのよ。その時、お母さん『ちょっと待って!今、“ケンカした時”って言った!?そっかぁ!!そうだったのかぁ!!!!ごめん、お母さんの叱り方が良くなかったんだ。躾だと受け取れなかったんだね、ケンカしてるつもりだったんだね。だから言うことを聞かずに対抗してたんだね。うん、確かに、ケンカだったら、相手の言うこと聞くはずないもんね!ごめんね。』ってことがあってさ、それから怒る時、叱る時、躾ける時、ちゃんと子どもが理解してくれないと、なぜ怒られてるのか、そう分かっていないと、只の虐待と一緒だと気付いて接せられるようになったんだよね~。」

 

「お兄ちゃんがさ、ひとりで留守番してる時、『ママ―、ママがいない時ねー、タンスが勝手に開いたり閉まったり、開いたり閉まったりしてたよー。』って普通に言ったこともあったよね。」

 

「中3の頃さ、お兄ちゃんが帰ってくるなり『なんか臭い!犬触って来た?』ってお母さんが騒いだら、『いやぁ。』ってお兄ちゃん言ってたよ。勿論、バスを降りてから自宅までの間に犬なんかいないの分かってたんだけど、『犬臭い!お風呂入って来て!っていうか、部屋も獣みたいな匂いがするんだけど、なんか動物霊連れて来た?いや、違うね。なんで?』ってことあったよね。あれってさ、お兄ちゃんの異性ホルモンにお母さんが反応してたらしいよ。近親相姦とかにならないように、なっちゃいけない間柄は本能で臭い!ってなるんだって。あの時は、何度も『まだ臭い!もう一回ちゃんと洗って来て!!』って強制してごめんね。でもいつか、お兄ちゃんのその匂いを『いい香り~!!』って言って来る異性がいるんだよ。その人とは、確実に赤ちゃんも授かる、生理的に相性もいいってことだからね。そんな子が出来たら、教えてね。」

 

そんな息子が、春から福岡県立大学に進学することが決まりました。
評定が4.2以上あるから学校推薦をもらえると、自分で先生たちに交渉していました。他方向に進む道もあったのに、16歳違いの妹が誕生したことにより、児童福祉に思いが傾いたようでした。

 

そう言えば、大神さまは、『親子は銀行と融資を請う関係であれ。』と言われます。
『子どもは、親だから当たり前にお金を出してもらえると思うな。親は、子どもの願いがその子にとって功を奏すると判断出来れば、出してやってよい』と。
子どもの性格上その道が妥当だろうかと疑念を持つのに、子どもがそう言うからとなぁなぁで出し続けるのは違うと云われます。
銀行が企業の融資に応える時、“事業計画”で判断するように子ども自身の人生観や仕事観を聞いて判断する必要があるというのです。
そこに行きたいのは子どもです。親が行ってくれと頭を下げてる訳ではない。だから、子どもに、『頑張るからスポンサーをお願いします。』と自覚と共に言わせなければならないのです。
『銀行は、立ち行かない企業に融資などせぬぞ。』と。

 

これらは、
「息子が次々学校ばかり行くけど、一向に働いてくれない。どうしたらいいか。」
とご高齢の夫婦が来談にみえた時、降りて来た御神託でした。
「そうですね。なまじ“学校”という道だから、悪いことではないし…と応援し続けてきたのでしょうが、もはやそれは、詐欺と一緒ですよ。」
と、糾弾も厭わない直情型の私は、敢えてオブラートに包む表現を避けました。貯金も尽きかけている、このご高齢夫婦のためにならないと考えたからでした。

 

「お母さんみたいになりたい、僕も社会福祉士や精神保健福祉士を目指したい。」
「うん。いいと思う。お兄ちゃん、優しいしね、クライアントに寄り添えるよ。充分資質は持ってると思う。」
私は、勿論、大賛成しました。
「でもさ、何で福岡県立大学だったの?お母さんがその道を目指し進学する時は、全国で国公立ではそこと、福島県立会津若松短期大学との二校しかなかったんだよ。今でこそ、たくさん増えたけどね~。お母さんは、しもやけが出来るから福島は寒いって、消去法で福岡県立大学に決めたんだけど、まさか息子が自分の大学の後輩になるとはね~!!」
そう言いながら、学校推薦を頂き、全国で5名枠に見事合格を果たした息子を誇らしく見上げました。お兄ちゃん、おめでとう。児相で勤く(いたづく)願いを叶え、世に資することを期待します。

 

とはいえ、まだまだ社会経験の足りない息子に心配もあります。
先日も、私が買い物中に妹を抱っこしてもらっていたのですが、店内にパッと見当たりません。探すと、妹と親子に間違えられたまま、保険の勧誘を受けていました(笑)!

 

いくら親でも出来ることに限界がある。何故なら24時間、永遠に子どもに付いている訳にはいかないから。でも、後は『世間さまが育ててくれる。』私はそう思っています。

 

その後無事、しめ縄替えも終わり、買い物選抜メンバーの娘たちと買い出しに出ました。
「はい。お年玉はこれにいれてね、よろしく。」
と、おしゃれなポチ袋を涼しい顔で娘がカゴに入れて、そのまま今度は嗜好品を選りすぐりに行きやがりました(爆笑)

 

皆さんはどのような年末年始になりそうですか?
私は、今年も終わりに近づいて、叔父が亡くなりましたので、正月飾りも鏡餅も今年は控え、厳かにシンプルに過ごす予定です。
また、合格が決まっているものの、学校の方針で補習に参加し大学入試共通テストも受験しなければならない息子のために大晦日以外は送迎です(スクールバスが出ない‥。)憧れの朝寝も出来ません。まぁ、それがなくとも、最小にして最大の魔獣のせいで、自分のタイミングで起きることは出来ないのですがね(笑)

 

コロナに振り回された年でしたが、それを踏まえつつ、新しい気持ちで新年を明るくお迎えくださいませ。
日向高千穂神道の氏子の皆さま、ご家族さまの平安とご多幸を遥かにお祈り申し上げます。

 

◎星祭りについて
コロナウィルス感染予防策として、ご家族様の代表者がお一人さまのみおいでくださいませ。代わりに、来られない方の洋服を一枚ずつお持ちくだされば、それをお越しくださった見立てに致します。勿論、御神託はそれぞれにお伝えいたします。

 

ホームページを開設した今年最後の『神職のお便り』でした。
御精読ありがとうございました。
また、年の瀬にも関わらず年内ギリギリまでお便りをホームページに挙げてくださいました奥田さんにも、改めて感謝申し上げます。