2022年05月12日

ご神木

昨年のことです。

 

「母は体調を崩しています。食欲もないし体重も減ってしまい…。お薬も次々合わず、余計に具合が悪くなり、心配で仕方ありません。まだまだ元気でいてもらいたいのです。」

 

心配した娘さま方が、お嫁さまも含めて廣前にお運びでした。

 

もうずいぶんと長いこと、毎年きちんと世帯ごとに、星祭りを受けてくださる氏子さま方ですから、私も十分な信頼関係があります。
心からご家族さまに代わって、大神さまにお訊ねを申し上げました。

 

「木を切ったなぁ。切っても構わんが、きちんと断りをしてから、切らんといかんぞ。」

 

神殿に向き合うと、ひと言そのように言われました。

 

すると、それを聞いていた娘さま方は、
「いえ、ちゃんとお塩とか撒いて、切りましたけど…。」
と、不思議そうに答えられます。

 

「それは、“前もって”きちんとなさいましたか?
と、私が聞き返しますと、
「切る前に、お塩など撒きました。」
と、おっしゃいます。

 

「え!?今言って、直ぐ切った!?」

 

「はい。」

 

「…早っ!!早いからー!!」

 

私は向きを変えて、自分の言葉で伝えました。

 

「そりゃあ、木に宿る精霊や神さまも、準備ってもんがあるでしょう!!」

 

私は大笑いしました。

 

「せめて、ひと月前、一週間前、三日前、前もってお断りしましょうよー。人間だって、今“立ち退き”なんて言われたら、驚きが怒りに変わるでしょうがー!」

 

厳かに始まった霊視の時間が、みんなで大笑いすることになりました。

 

「そう言えば、前、こんなことがありました。腰の痛みが治らないと言ってご相談に来られた50代の女性がおられたのです。整形外科を数カ所変わり診てもらったようなのですが、所見上は何もなく、原因がわからないと言うことでした。大神さまに訊ねると、その時も“庭の木を切ったなぁ”と言われました。私はそのことを自分の言葉でこう伝えました。“奥様がお切りになったその木は、神さまのとまり木になっていたようですよ。神さまは、移動なさいます。そしてその際、木から木へ、お移りになられるのです。ちょうど奥様が、木を切られたその瞬間に、たまたま男の神さまが、その木の上でお休みになられていたようですが、それを突然切られてしまい、神さまは尻餅をつく形で、下へ落ちてしまわれたようなのです。きっと、腰の痛みはそこからです。”その後、更にご神託を頂くと、“苗木を植えなされ。そして、こう言うのじゃ。小さいですが、新たにとまり木を用意しましたので、どうぞここでおやすみくださいと、植樹しながら伝えるのじゃ。”と言われました。このケースもまた、前もってお断りせず、突然だった為に障りが起こったと考えられるのです。なぜなら、その植樹の後、ピタリと腰の痛みは無くなったそうですから。」

 

ここまで事例を交えて、ひとしきり話をしたところで、私の悪い癖ですが、もう一つ伝え忘れていることを思い出しました。

 

「そういえば、先ほどご神託を伝えながら、お母さまが切られたこの木には、とってもきれいな女の神さまが宿っておられるのが視えましたよ。」

 

それをお伝えし、ではどうやって詫びれば良いかを引き続き神殿に向かい、大神さまからのお言葉としてお伝えしました。

 

「切った木の、切り株の上に、まぁるく(丸く)供物を準備するのじゃ。桃や枝豆、塩、米…」

 

ご神託と同時に目に視せられる品々が、奉献すべき味物(ためつもの)だと分かりましたので、詳らかにお伝えして、ご相談の時間を終えました。

 

それから、数日後、長女さまよりご連絡を頂戴しました。

 

「母が元気になりました。言われた通りに、切り株の上にお供えをして、それからです。もうご飯も食べられるようになり、心配がなくなりました。ありがとうございます。そう言えば、不思議なことがありました。そのお供えをした、その日の夜、明け方の夢に、きれいな女の人が、笑顔で現れました。あんなに綺麗な人は、初めて見ました!」

 

「その女性が、私がお伝えした女の神さまでしょう。ありがとうって、喜ばれたのですよ、きっと。」

 

私も大好きな、この三世代の家内(いえぬち)にやっと安堵の笑顔が戻り、幸いでした。