2022年06月23日
F家のファインプレー
約束の時間に10分ほど遅れそうだと、道中よりMさんから、メールを頂きました。
このように御一報くださるお気遣いをなさる方は、みんながみんなではありません。
ひと言お伝え頂くだけで、私は氏子さまの事故の心配をしたり、はたまた無断キャンセルかと、胸を騒つかせずに済みます。
随分前ですが、連絡もなく20分以上遅れて来られた方がおられました。
とりあえず、おいでになられたので無断キャンセルではなかったと安堵したのですが、私はその側から焦燥感に駆られ始めていました。
ご相談ごとをヒアリングする時、私はその内容に応じて、おおよその時間を分割し、逆算しながら奉務に臨んでいるのです。
20分過ぎと言えば、どんなに深い内容であっても、ヒアリングを終えて御神託を受けている頃です。
しかし、その方はご相談を3つしっかりと書いているではありませんか!
私は、驚きが怒りに変わり、
「お言葉ですが、30分で50分のことは出来ません。例えば、エステだって、60分ないとひと通り出来ないコースを30分でしてくれと言っても出来ないはずです!優先して(相談ごとを)絞ってください‼︎」
と言い上げたことがあります。
奉務に入る前は、穏やかでいたいのに、
本当にいろんな人間がいるのです。
仮にも待たせているのは、私じゃなくて、
大神さまなのに‥。
(開始時刻を、うっかり勘違いなさっていた方は、仕方ありませんけどね。)
かくして遠路、Mさんが廣前においでになりました。
今回、ご相談の内容から二つを紹介します。
が、予め、このMさん、極度の怖がりであることを念頭に置いて、読み進めてください(笑)
(本人よりご快諾賜っております。)
さて、ひとつ目。
「今しばらくはないけれど、車の“付くはずの場所”に、“子どもの手形”が付いていることが、続く時があってそれが怖くて怖くて…。」
と言われました。
恐ろしいことが判明するかもしれない。
でも、知らないままは余計に気味が悪い。
言葉には出されませんが、そんなMさんの心中を察しました。
大神さまの御神託は、
「それはなぁ、そなたの息子と遊びたいと願う、そなたの母方の先祖たちの仕業じゃ。幼くして亡くなった先祖たちが、先祖とはいえ、子どもたちじゃからな。そなたの息子と遊びたいことのお知らせの印じゃ。」
ということでした。
すると、Mさんは、
「近所には、小さい子が多いのですが、なぜかうちの中学生の息子は、その子どもたちに“◯ちゃん、◯ちゃん”と慕われて、たくさんの子どもたちが寄って来ます。随分年も離れているのに、みんなが集まって来るんです。」
と言われました。
私は、
「そうでしょう、そうでしょう。実はそれを、幼くして亡くなった先祖たちが知っているのですよ。それで、自分たちも、◯くんと遊びたいって、ちょっと嫉妬してるんですね。それを分かって欲しくて、車に分かるようにお知らせしたんです。」
と読解したことを、自分の言葉で伝えました。
怖がりのMさんの強張った表情が、少し緩むのが見て取れました。
次に、二つ目のご相談です。
「その息子なんですが、実は少し前に、すごい大怪我をしました。自転車での自損事故です。私が、上の娘を高校のオープンキャンパスに連れて行く日でした。すでに事故現場では、親切な運転手さんたちが、車を停めて警察に連絡してくれたり、救急車を呼んでくれたりしていました。その時、たまたま居合わせた方が、息子の自損事故の様子を終始目撃していたらしいのですが、その方が言われるには、『ゆっくり一回転した。』と言うのです。事故で、顔から大量に出血していた息子は、その時、運ばれながら、『これは夢?夢?』と言っていました。あまりの出来事に、本人も状況を把握できていなかったのでしょう。そして、今現在は、その時のことを覚えていません。あの出来事は何だったのでしょうか?もしかしたら、娘に“その高校が合わないよ”ということで、オープンキャンパスに行かせないための出来事だったのでしょうか?でも、娘は今、その高校に楽しく行っているんです。合わなかったからとは、思えない…。そして、あの時、実は私の母が息子に『車で送って行こうか?』と声を掛けてくれていたのです。でも、息子は『自分で自転車で行くよー!』と答えて、送ってもらわなかったそうなのです。しかしその結果、孫が大怪我をしてしまったと、私の母は、自分が送ってあげなかったからだと、とても自分を責めて、そして後悔しているのです。」
相談せねばならぬとはいえ、Mさんは語りながら思い出すのも、さぞ辛かったことでしょう。
なにせ、彼女自身も、その時いかにパニックに陥っていたかの状況をお話しくださいましたから。
私の口を借りて、大神さまがゆっくりと伝え始めました。
「二つの理由がある。ひとつは、そなたが高校進学を控えた娘にばかり、ちと気を取られていたからな。息子の潜在意識から、『こっち向いてホイ』をされたのじゃな。因って、娘にその高校への進学を阻止するという意味はなかったんじゃ。それと、二つ目。あくまでもこれは事故じゃ。そして、起こるべくして起きた事故じゃった。」
大神さまがここまで言われた時、私は一旦、御神託を中断して、Mさんの方を向いて伝えました。
「Mさん、息子さんの自転車は、ものすごい勢いで、かなりのスピードが出ていましたよ。そして、大通りに出る手前で、どういうわけか、勝手に“クッ!”と一瞬だけブレーキが掛かっています。ずーっとブレーキが掛かった状態ではないのです。一瞬だけ、強く“グッ‼︎”と掛かったのです。自動で…。」
中断したのは、託宣を取りながら、霊視したことを伝えるためでした。
そしてまたモードを切り替え、御神託を頂きます。
「その先は、大通り。しかし、急ブレーキを掛け続けておれば、自転車は大きくスリップし続け、身体の傷は全身に及んだであろう。だから、転ばすために一瞬だけブレーキを強く掛けたのじゃ。これまた、そなたの母方の先祖がそうしておる。そなたの母は、かわいい孫を送ろうと試みた。しかし、その護り(送ること)をそなたの息子は、何なく通過してしまった。そこで、そなたの母方の先祖、特にそなたの母の実父、つまり、そなたの息子の曽祖父、中々のハンサムじゃが、この者が一瞬のブレーキで、命を助けたのじゃ。先程も言うたように、スリップさせぬよう、またそのままの勢いで、大通りに突っ込んで行かぬよう、最善の方法で子孫を護ったのじゃ。」
私の言葉で続けました。
「Mさん、もし、一回転しなかったら、大変なことになっていましたよ。そのままの勢いで突っ込めば、間違いなく車と衝突し、今回あんなに親身になってくださっていた、運転手さんたちを逆に加害者にしてしまったことでしょう。そして、スリップしていたら、大怪我もいいところでしたね。」
私は、わざとではありませんが、山で滑落死された方の御遺体を想像していました。
続いてMさんが、やっとの思いで口を開きました。
「そこは、ものすごく急な下り道なんです‥。そして、その先は大通りです‥。」
「母親ですもの、今、思い起こしても辛いですよね。でも、Mさんのお母さんも、自分を責める必要はないですよ。だってさっき、御神託で言われましたよね。ちゃんとひと役買っていたって。おばあちゃんは、自分の役目、『送って行こうか?』の第一関門をちゃんと果たしたんですよ。Mさんの息子さんは、スルーしちゃったけど。だから、それを見ていた、おばあちゃんの父、つまり息子さんのひいじいちゃんが、慌てて急遽、第二関門となり、セーブしたと言う話なんです。すごいですね、Mさんのお母さん含め、お母さん方の先祖たちのファインプレー!」
私の言葉に続けて、Mさんが言いました。
「母方の先祖は、F家といいます。まさかのF家からの守護だなんて。息子は、顔も主人似ですから、そのままM家から護られてるものと思っていました。‥そういえば、私の母方の先祖へはお墓参りも行っていないですね…。」
「是非、息子さんと一緒に行ってください。F家の先祖たちに感謝の意を伝えて来てください。また、手形付けたりして主張していた幼い先祖たちも喜ぶから。」
「はい。そうします。それにしても、今日のご相談ごとの二つとも、F家が関係していたなんて!すごいです。もっともっと、怖いことを想像していて、恐怖に耐える覚悟を決めて来たのですが、こんなに温かい時間になるなんて!本当にありがとうございました。思い切って、先生に相談してよかったです。」
霊的な作用があったのは事実ですが、恐怖体験ではなかったのです。
霊視相談開始時には張り詰めた雰囲気だった神殿が、お帰りになる頃には小春日和のような雰囲気に包まれていました。