2023年10月26日
憑依の真意
「実家を取り壊し、姉妹で新しく家を建て直します。」ということで、家内安全並びに屋敷祓いの依頼を受付ました。
ご予約をいただいてから、修祓を斎行する日までに、「家の中にある“気になる物“について、霊視相談もお願いします。」ということでしたから、後日そちらもお持ちいただいた写真を確認しながら、“処分する物”、“残す物”、“欲しいという方に譲る物”など、その趣旨に合わせて『プチ儀式』や『特別な方法』など、氏子さまが出来るやり方を霊視で確認し、御神託に基づいてお伝えしました。
また、中にはぬいぐるみや縁起物の置物などがありまして、それらは“実体のない物”によって棲み家とされていることが見受けられましたので、日を改めて『正念抜き』(宿っているたましいを天に上げる儀式で、此度の場合は仏壇でもありませんでしたから閉眼供養とは意味合いが違います。)を私の方で致しました。
きちんと浄化しなければ、そのまま廃棄することで霊障を受けてもなりませんし、また残存するものに宿り直されても困りますから。
これまでのご相談の中でも、家の中で怪奇現象が起こっているのに、霊道も見当たらなければ霊体の姿も視えないことがありました。
そんな時私は、先ず“ぬいぐるみ”や“人の顔が描かれている絵画”などを疑います。すると、大抵それらを棲み家にしている物がいて、そこに隠れていたりするものなんです。
諸々の準備が相調い、姉妹のうちのお二人が修祓に参加され、家内安全並びに屋敷祓いの当日を迎えました。
椅子を勧めましたが、お姉さんの方は霊視相談や星祭に来られる時のいつものように「私はここが落ち着く。」と、畳の上に正座をなさいました。
それは、大神さまへ対しての畏敬の念からの姿勢であることを分かってはいるのですが、なんだかいつも私が申し訳なく感じ、つい「面を上げい。」(あっ、これは違うか!)、「せめて足を崩してお座りくださいね。」と言っています。
少し雑談をした後、私も格衣を纏いました。
身禊大祓、祓串で玉串や授与品を浄め、お二人にも御低頭頂いてお浄めをさせて頂き、家内安全並びに屋敷祓いの特殊祝詞を奏上始めます。
祝詞には構成があって、最初の方は神さまを称える内容で奉製するのですが、その辺りから私の後ろですすり泣くような声が聞こえ始めました。
私は若い頃から祝詞やお経を上げると、よく「感動して涙が出て来ました。」とか「難しくて意味は分かりませんが、声に聞き惚れていました。」などと言われて来ました。
自分ではよく分かりませんが、日常会話での発声とは違うのでしょう。
(関係あるのか分かりませんが、英語に長けている私の娘も、日本語を話す時と英語を話す時では、声質や声色が全く違います。それこそ私は、彼女のスピーチを聞いていて、内容は全く理解出来ていなかったのですが、感動して涙を流したことがあります。後で「あれはモナリザについての内容で、泣くようなことは一切話していない。」と娘に笑われましたが。)
『言語が違えば発声が異なって来るから、違う風に聴こえるようですねぇ。私がさっきは、大和言葉での発声でしたから、さぞかし美声に聴こえて感動なさいましたでしょう?』
なんて、後で冗談を言おう思っていましたら、だんだんと聞こえる泣き声は嗚咽に変わっていきました。
それと同時に、私はその泣き声が本人のものではなく、憑依によるものだと気づきました。
しかし、祝詞をまだ半分程残していましたから、途中で止める訳にはいきません。
『おそらく、亡くなられたご両親のどちらかに違いない。』
儀式中ですから、後ろを振り返ることは出来ませんでしたが、私はそのように確信していました。
『縁のある御仏なら、今は放っといて心配ない。でも、妹さんの方はきっと何が起こっているか分からずに、驚いているだろうな。』と思いつつ、正面を見たまま最後まで祝詞を奏上しました。
私は、柏手を打ち終えてから、お姉さんの横に移動しました。
妹さんを見ると、案の定“引いて”おられました。
「大丈夫ですよ。お父さまかお母さまが、お姉さんの体に来ておられるんです。」
妹さんにそのように伝え、私はお姉さんの背中をさすりながらゆっくり問いかけました。
「どなた?お父さん?」
すると、お姉さんは首を大きく横に振りました。お顔は、涙と鼻水で溢れています。
「そっかぁ。じゃあ、お母さんですね?」
今度は大きく頷きました。
「お母さん、今日はよかったねぇ。新しいお家、おめでとうございます。娘さんのうち、〇〇さんと〇〇さんの二人が今、ここにおいやっですよ。古かまんまのお家じゃ、近所ん人にもげんなかったでしょう?残した家土地が、気掛かりじゃったもんねぇ。お父さんと一緒懸命守って来た家土地を、我が子が立派に建て直してくれて、こげん良かこっはなかよー!何人も苦労して育てやった甲斐がありもしたね!」
私は、若い頃高齢者福祉分野でもワーカーをしていましたから、娘が英語を話すように鹿児島弁を話せます(笑)
すると、頭を下げながら
「ありがとう、ありがとう。」
とお姉さんの口を借りて、お母さんは感謝の言葉を繰り返されました。
妹さんに目をやると、彼女もぽろぽろと涙を流しておられます。
お母さんからもっとたくさんの話が出て来るようでしたら、引き出してみようと思いましたが、やはりひたすらに「ありがとう」の言葉に尽きるようでした。(亡くなった方の殆どは、そうです。多くを語るより、感謝を語ります。)
私も霊媒として、敢えて自分の体に憑依して頂くことがありますので、その後とても疲れることを考えると(憑かれる🟰疲れるですから。)そろそろお母さんには、お姉さんの体を離れてもらう頃合いかなと考えました。(祝詞の奏上中、すすり泣きをなさっていた頃から、お姉さんは憑依を受けていたわけですから。)
そこで私は、
「お母さん、そろそろ〇〇さんの体を離れましょうか?〇〇さんもね、初めてのことで慣れておらんから、後からどっぷいダレやっからね。お母さんも、亡くなった以上は、本来おるべき場所に戻らんないかんよ。」と言いました。
お母さんは、私の言葉に大きく頷きます。
「そうだ。せっかくだから、お彼岸も来るし、なんか良かもんのお供えしてもらおうか?ないが欲しかいやっね?」
私が訊ねましたが、お母さんは遠慮をなさっているか、もう感無量と行った風にも見えまして、大きく首を横に振り続けます。
そこで私は、お母さんの想いを勝手に汲んでみました。
「お母さん、私には視えちょいよ。冷奴が食もろごあったっでしょう?あと、たい焼きもねぇ。そいから、我がばっかいじゃのして、お父さんの分も頼もか?」
お母さんは、冷奴とたい焼きのくだりには頭を大きく縦に振り嬉しそうでしたが、夫のお供えまで甘えるのは申し訳ないと思われたのか、お父さんへの希望を聞くときには、また頭を横に振っておられました。
だから、私はまた勝手に視せて頂きました。
「お母さん、お父さんには、冷素麺でよかね。お父さんな、素麺が好きじゃったでしょう?」
そう言うと、大きく頷かれました。
「〇〇さん、今の品々をお二人の御仏前にお供えしてあげてくださいね。そして、その後は、“私たちの口を通して一緒に味わってね。”と言って、召し上がってくださいね。」
妹さんにそう声を掛けてから、私はお母さんに再び声掛けしました。
「お母さん、ほんならそろそろ離れようか?今日は一緒に屋敷祓いに参加してくださって、ありがとうございましたね。これからは慣れ親しんだあの家とは違うておっけど、お母さんの形見のベストを娘さんたちが分かるところに掛けて置くから、それを目印にして帰って来やんせな。“我が家”やっからね。」
そう言うと、
「ありがとう、ありがとう。」
と重ねて感謝なさり、そして離れることを承知してくれましたので、私はお姉さんの体からお母さんを離し、天上界へお送りしました。
ふと我に返ったお姉さんが、
「あー、なんだったのか。急に涙が止まらなくなって。あー。」
と脱力感たっぷりに、ぐちゃぐちゃになったお顔をハンカチで拭われました。
「これが憑依ですよ。ね?不思議な感覚でしょう?でも、憑依を受けている時に涙が流れると、その後は本当に気持ちがいいですよね。何にも変えられない、その他で再現出来ない清々しさがあります。それは霊が受けた感覚なのです。」
私はお姉さんに言いました。
妹さんは、
「びっくりしました。姉は一緒にお参りに行くと、1人だけ涙を流したり、その場から離れなかったりするので、また何か変なことしてるなぁくらいに思ったのです。でも、母だったのですね。苦労して、手に入れた家土地でしたから、思い入れが大きかったんだと思います。最後まで、家のことを気にしていましたから。それから、父も母も好物がそのままでした。早速お供えしたいと思います。」
と言われていました。
そうやって、感動の修祓を終えました。
その後のお二人もご存じないことを、ここから下に書きます。
お二人が喜んでお帰りになられてから、私はひとり考えごとをしていました。
『妹さんもいらしたのに、またどちらも私からすれば同じくらい霊的に感度の高い方達なのに、何故、憑依したのがお姉さんの方だったのかなぁ。』
すると、大神さまが話し掛けて来られました。
「妹は独身だが、姉は本当は家族があるだろう?しかし、姉の家庭には姉の居場所がない。実家しか頼るところがない状態じゃ。事情はあれども、姉はどこか気後れしながら実家に住まいすることになろう。姉なりに、“本当は嫁に出ている自分がまた実家で暮らすなんて、両親はなんて思うだろう。“世間はどう思うだろう。”と、肩身が狭いはずなんじゃ。だから、母親は姉に憑依して、“遠慮なんか要らんよ。”ということや、むしろ“ありがとう。”ということを直接言わせ、“堂々と住んで欲しい”と伝え見せたんじゃ。」
なるほど…。
「さすが、大神さま御名答ですね。」
私は大神さまの横入りを忘れ、一向に感銘を受けました。
お姉さん、きっと今、このお便りを御精読なさっていますよね?
そういうことなら、大納得!ですよね?
だから、堂々と住んでくださいね。
そしてほら、やっぱり、私がずーっとずーっと前から、“事あるごと”に言っていた通りということですよ!
「お姉さんは、嫁に行ってますが、△△家の“長女”ではなくて、“長男”ですからね。」